降下粉塵班の研究


熊谷高校地学部の降下粉塵班は、宇宙塵(流星塵)研究を前身として始まった降下粉塵の研究を、5年以上前から行っております。
今年も例年同様、1年間の研究のまとめとして日本学生科学賞埼玉地区展覧会(埼玉県科学教育振興展覧会中央展)に降下粉塵班の研究を出品いたしました。その内容をご紹介致したいと思います。




浮遊粉塵と大気現象  

埼玉県立熊谷高等学校地学部


1 はじめに
 私たちは様々な降下粉塵のなかで生活している。最近では中国大陸からもたらされる黄砂や排気ガス、SPM等が生活問題となりだした。そこで降下粉塵の自動回収機を試作し、粉塵の週間リズムの研究(平成12年度発表)、降下粉塵と風配図との関係および粉塵の定性分析(平成13年度発表)と、研究発表をしてきた。その結果、鉱物粒子や花粉粒子、排ガス粒子には年間を通して季節変動が見られることがわかった。

@ 花粉粒子は3〜4月にかけて見られるが6月になるとほとんど観察されない。観察された花粉は杉花粉が圧倒的に多かった。

A 鉱物粒子の季節変動は4〜5月にかけてのピークが見られた。春先の砂塵は熊谷周辺の畑から多くがもたらされるものと考えられる。

B 排ガス粒子の季節変動は11月に増え始め4月に減少し始める傾向が見られた。本校の西方および北方に車両通過台数の多い国道が走っており、風配図との関連から、季節風によりもたらされるものと考えられる。

上記3種類に入らない識別不可能な微粒子(20μm未満)は、数のうえではいちばん多く、今回はこれらの微粒子に着目してみた。20μm未満の粒子は、大気中を長期間浮遊してきた粒子と考えられるので、浮遊粉塵と呼ぶ事にした。

 ※SPM(Suspended  Particulate  Matter)は10μm以下の粒子で、硫酸塩、硝酸塩、炭素粒子など0.5μm程度のものが多いといわれている。

2 仮説
 浮遊粉塵は大気中で雲の凝結核になると考えられている。したがって、必ずしも季節変動とは関係はなく、降雨、霧、もやなどの大気現象に深く関わっているのではないかと考え、浮遊粉塵の数と大気現象の出現頻度について調べることとした。(黄砂のように季節変動のある浮遊粉塵も雲の凝結核になるといわれている)                          

 ※視程距離1km未満が霧、それ以上がもやチリまたは砂粒子が舞い上げられた風じんによる視程不良をチリ煙霧という。

3研究方法
@百葉箱の中に自動回収装置を設置し(一週間巻き)、空気中に漂っている粉塵を、自動回収装置を用いて採取した。

A 150倍の生物顕微鏡に顕微鏡カメラを取り付け、プレパラートの中心(固定枠)をテレビ画面に映し、粉塵の種類を分類した。判別しやすい粒子(花粉、排ガス粒子、鉱物)と、あまりにも小さすぎるため、判別の難しいものや、その他を判別不可能粒子として、4つに分類した。
粉塵の大きさは、20μm以上を大、それ未満をすべて小とした。

B得られたデータのうちから今回は20μm以下の粒子数を熊谷地気象台発表の大気現象頻度と照らし合わせた。気象台発表の大気現象には雨、霧、煙霧、雷(雷鳴、雷光含む)があるが、チリ煙霧は含まれていない。

4 計測データ表(例)

5 結果
 浮遊粉塵の月別集計数と月別大気現象の出現頻度をグラフ化したのが下の図である。このグラフが示すように、大きい粒子(花粉や鉱物)も大気現象との相関がみられたが、浮遊粉塵は大気現象のうちことに雨、霧の出現と負の相関関係があった。

6 結論・考察
@ 浮遊粉塵と降雨との負の相関関係が見られたのは、浮遊粉塵が雲の凝結核になること、および雨滴が落下途中で粉塵を洗い流すことと関係があるものと推定される。

A 煙霧、もやといわれる大気現象には実際はチリ煙霧とよぶべき大気現象がかなり含まれるのではないかと思われる。降雨の後は空が澄んで、遠方の山々が見透すことができる。朝、昼、晩に本校理科棟屋上から北西の方角を撮影した下の写真でも、視程距離が時間を追って短くなっている。これは水蒸気量も影響している他に、交通量の増加にともなう粉塵の舞い上げ、工場などから排出される粉塵が影響しているものと考えられる。

7 今後の発展
  今回は大気現象の出現頻度を熊谷地方気象台のデータにたよったが、今後はチリ煙霧の出現頻度を実際に本校理科棟屋上を固定点にして、視程距離から割り出していきたいと考える。

8 参考
   自動回収装置の製作;浅木他(1999年発表)
   降下粉塵の週間リズムの研究;涌井他(2000年発表)
   降下粉塵の定性分析の研究;園部他(2001年発表)
   気象速報、月報(熊谷地方気象台、気象協会)

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